研究概要 |
Cryptococcus neoformansには特異な細胞周期制御現象が観察され、我々は細胞周期制御の中心に位置するCdk1(サイクリン依存性キナーゼ1)とそれと相互作用する制御因子サイクリン類について解析を進めている。CnCln1分子は本菌では唯一のG1サイクリン遺伝子であると思われたが、その遺伝子破壊株が得られたことより、本菌の生存には必須ではないことが示された。CnCln1遺伝子破壊株は「出芽時期が遅れ、細胞は大型化する」等「in vitro低酸素環境下」や「in vivo感染時」と類似した極めて異常な形態・特徴的な変化を示し,CnCln1は,細胞の大きさと形態,出芽と細胞分裂のタイミング、DNA合成開始のタイミング、37℃での生育遅滞など幅広く細胞の形態形成や生理的機能に大きな影響を及ぼす極めて重要な細胞機能制御遺伝子であることが示された。また、CnCdk1とCnCln1の結合について,その構造機能相関解析を行い、生理的意義についても考察した。本菌CnCln1の遺伝子をSaccharomyces cerevisiaeにおいて発現させその機能を検証しS.cerevisiaeのG1サイクリンScCln1,ScCln2,ScClin3との分子構造・機能の比較、S.cerevisiaeのサイクリン依存性キナーゼScCDK1とCnCln1との間の結合などについてそのバイオインフォマティックス的解析を行い、その結果を踏まえて分子間結合相関の生理的な意義を考察した。更に、C.neoformansは肺で感染後、脳髄膜へ移行して病原性を発揮して行く際、高酸素環境から低酸素環境への酸素欠乏ストレス条件に打ち勝ってはじめて増殖して行くが、本菌ゲノムへのランダム挿入遺伝子変異体ライブラリーを構築し変異体の低酸素状態への応答解析などを通して、本菌において低酸素ストレス応答に関与する遺伝子の同定を行った。そのうちの一つとして転写因子を同定し、分子生物学的、生化学的、細胞学的解析を進め、本分子の低酸素環境ストレス応答機構における意義を考察するとともに、その遺伝子破壊株を用いたマウス病原性試験も実施するなどして考察を進めた。
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