マイコバクテリアの細胞壁に在する糖脂質Phosphatidylinosltol Mannosides (PIM)、Lipomannan (LM)、Lipoarabinomnnan (LAM)は免疫修飾に重要であると示唆されている。本研究では、これらの糖脂質の生合成酵素を欠損したマイコバクテリア変異株を利用して、これらの糖脂質の持つ免疫修飾活性に必須な構造モチーフを決定し、またこれらの糖脂質の生理的意義を明らかにすることを目的とした。平成21年度にスメグヤ菌(M.smegmatis)由来PIM/LM/LAMの免疫賦活分子としての生理的意義に関連して予想桝の興味深い知見が得られたので、平成22年度にこれらの免疫賦活分子の生合成に関して集中して研究を行い、直鎖伸長にかかわる酵素と側鎖を合成する酵素の発現レベルのコントロールが、LM/LAMの生合成に重要であることを明らかにした。平成23年度には、更にスメグマ菌と結核菌(M.tuberculosis)において、これらのLM/LAMの構造的異常が細胞壁の透過性に関する異常を引き起こしていることを明らかにし、その結果として、特に結核菌において、抗酸染色や薬剤感受性に関する異常を明らかにした。また、関連するリン脂質として、これまでバクテリアにおいて未知であったボスファチジルイノシトール3リン酸の存在をスメグマ菌において初めて明らかにし、そのシグナル伝達分子としての可能性を示唆した。
|