研究概要 |
1)H.pyloriの主要な病原因子であるvacA, cagAの遺伝子をノックアウトした菌を作製し、マクロファージに対する作用を検討した。培養細胞系マクロファージであるNOMO-1に、これら遺伝子ノックアウト菌を作用させたところ、サイトカインの産生が低下した。 また上皮細胞糸のKATO-3に作用させた時も同様な傾向が認められた。菌の刺激による培養細胞からのサイトカイン産生は、マクロファージ系細胞からの産生量が多く、胃の炎症には、菌によるマクロファージの刺激が重要であると考えられた。 2)胃ガンの発症に深い関係がある、胃粘膜萎縮の程度が軽度および重度の患者より分離したH.pyloriの病原遺伝子タイプを検討したところ、遣伝子タイプと、萎縮の進展には関連性が見いだせなかった。胃ガンは、萎縮胃粘膜から発生してくると考えられているが、ヒトの胃ガンの発症には、菌の遺伝子タイプは関係ないと推測された。 3)患者の末梢血リンパ球を採取し、IL-4, GM-CSF存在下で菌の細胞成分と熱ショックタンパク質(HSP60)で抗原刺激し、患者リンパ球のマクロファージレセブターDEC205とサイトカイン産生造伝子のmRNA発現を検討した。H.pylori感染者は、末梢血単球系細胞のDEC205の発現が上昇していた。しかし、胃ガン以外の患者との差は認められなかった、また胃ガン患者では、Th-2の液性免疫に関わるサイトカインの発現が上昇していた。
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