研究課題
炎症誘導性サイトカインであるインターロイキン(IL)-17による感染免疫応答メカニズムは未だ完全に理解されておらず、特にIL-17の結核菌感染に対する生体防御の意義も不明な点が多いのが現状である。本研究では「IL-17を共通な要素とするサイトカインネットワークによる免疫制御および感染防御機構の解明」を目的にし、以下の結果を得た。肉芽腫形成の過程にIL-17Aがどのように関与するのか、Mycobacterium bovis Bcille de Calmette et Guerin(BCG)を感染させた正常マウスおよびIL-17A遺伝子欠損(KO)マウスの肺組織から経時的に相補的DNAを調製し、real-time RT-PCR法で細胞接着分子および単球走化性因子の発現を比較した。その結果、感染14日目において、ICAM-1ならびにLFA-1の発現が正常マウスに比べIL-17A KOマウスで有意に低いことが認められた。このICAM-1およびLFA-1の発現増強にIL-17産生TCRγδ^+T細胞が直接的に関与しているのかin vitroにおける解析を試みた。正常マウス由来のTCRγδ^+T細胞の混合培養でのみ細胞接着分子の発現増強が認められた。また、このIL-17Aにより一部制御される細胞接着分子の発現を抗体でブロックすることで肉芽腫形成を減弱出来るか検討を加えた。コントロール抗体あるいは未処理群の肉芽腫形成に比べ、細胞接着分子を抗体処理した群は顕著な肉芽腫形成の抑制を示した。さらに、この細胞接着分子の発現増強にはCD40Lが関与することも明らかにした。以上の結果から、TCRYγδ^+T細胞から産生されるIL-17Aが細胞表面に発現するCD40Lを介した細胞間相互作用と共同して、細胞接着分子ICAM-1およびLFA-1の発現を誘導し、迅速に感染局所での肉芽腫形成を誘導する役割を担っていることが示唆された。
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