研究課題
ガス壊疽菌群のコラゲナーゼのC末端にはコラーゲン結合ドメイン(CBD)が共通に存在している。CBDは不溶性のコラーゲン細繊維に本酵素をアンカーリングするのに役立つと考えられた。CBDは結晶学的解析によりβサンドイッチ構造をとりCa結合部位を持つことが示された。また部位特異的突然変異によりCBDはサンドイッチの側面でコラーゲンに結合すると考えられた。今回は分子ドッキングにより示された3種類の基質結合モデルの内いずれが正しいかを、コラーゲン様ペプチドを用いたNMR perturbaton assayにより検討した。N末端スピン標識ペプチドでは非標識ペプチドによる変化に加えCa結合部位から離れた部位のシグナルが消失した。C末端標識ペプチドではCa結合部位近傍のシグナルが消失した。基質ペプチドはβサンドイッチの側面に、βストランドに直行する方向で、C末端がCa結合部位に向いて結合すると考えられた。小角X線回折により水溶液中のCBD-基質複合体の立体構造を決定したところ、CBDは基質分子のC末端近傍に結合していると推定された。線維芽細胞とアテロコラーゲンを含む溶液を生体親和性メッシュを通して還流し、メッシュの上に高密度の人工結合組織を形成した。これを表皮成長因子(EGF)-CBD融合タンパク質と表皮細胞を含む培養液で覆って24時間静置後、通常の培養液に置換して14日間培養した。線維芽細胞とコラーゲン細線維からなる人工真皮層の上に、重層扁平上皮からなる人工表皮層が形成され、その上層部は角化していた。有蕀層では正常皮膚に比較して少ないながらもデスモゾームが形成されていた。表皮の基底細胞下には不連続ながら基底板が形成されていた。細胞外マトリックスに特定の機能を持たせて得られる積層型人工組織は基礎医学研究および再生医療分野で種々の応用が可能であると思われる。
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