ガス壊疽菌群は膠原繊維を水解して急激に感染叢を拡大する。本菌群が産生するコラゲナーゼのC末端には、約120アミノ酸残基よりなるコラーゲン結合ドメイン(CBD)が1~3コピー存在している。CBDは単体で不溶性コラーゲンに結合するので、本酵素はCBDにより自身を不溶性基質の表面にアンカーリングし、効率よく基質を水解すると考えられた。CBDはβサンドイッチ構造をとり、サンドイッチ開口部はCa結合位で閉鎖されていた。基質ペプチドはサンドイッチ側面にストランドに直行する方向で、C末端がCa結合部位に向いて結合すると推測された。ところで、コラーゲン分子の重合反応はコラーゲン結合タンパク質(CBP)により阻害されるが、CBPに結合するコラーゲン様ペプチドを添加すると再び重合反応が起こる。種々のコラーゲン様ペプチドを用いてCBDの結合スペクトルを解析したところ、他のコラーゲン結合タンパク質に比し配列特異性が低いことが判明した。CBDはコラーゲン分子の多様な部位に結合すると推察された。 線維芽細胞とアテロコラーゲンを含む溶液を生体親和性メッシュを通して還流し、メッシュ上に人工真皮に相当する高密度の人工結合組織を形成できた。これを表皮成長因子(EGF)-CBD融合タンパク質と表皮細胞を含む培養液で覆って24時間静置後、通常の培養液に置換して気相培養した。線維芽細胞とコラーゲン細線維からなる人工真皮層の上に、重層扁平上皮からなる人工表皮層が形成され、その上層部は角化していた。有蕀層では正常皮膚に比較して少ないながらもデスモゾームが形成されていた。表皮の基底細胞下には不連続ながら基底板が形成されていた。現在、この人工真皮層に新たな機能を付与すべく検討を行っている。また高密度コラーゲンに特定の機能性分子をアンカーリングすることにより再生医療分野で種々の応用が可能であると思われる。
|