結核菌細胞壁に存在する主な脂質として、lipoarabinomanman(LAM)、phosphatidylinositol dimannosides(PIM)やtrehalose dimycolate(TDM)が知られているが、なかでもTDMは肺結核において観察される肉芽腫形成を強く誘導する糖脂質として注目されている。結核菌より抽出したTDMをマウスに投与すると、投与早期の肺において活性化αβ型T細胞およびγδ型T細胞が増加していた。特に、γδ型T細胞によって炎症性サイトカインであるIL-17が産生されていたが、αβ型T細胞はIL-17を産生していなかった。TDMを投与する前に、抗γδTCR抗体を用いてγδ型T細胞を除去することにより肉芽腫形成が顕著に減弱したことから、このγδ型T細胞はTDMによる肉芽腫形成誘導に関与していることが示唆された。 マウスはCD1b遺伝子が存在しないため結核菌糖脂質に対する適応免疫が誘導されない。このためTDMを投与しても一過性の肉芽腫が起こるだけである。そこで、本研究では、ヒトCD1bトランスジェニックマウスを作製し、このマウスにTDMを投与すると一過性の異物性肉芽腫だけではなく、慢性肉芽腫の形成も観察された。本研究で作製したヒトCD1bトランスジェニックマウスは、結核感染モデルとして湯用であると考えられる。
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