研究課題/領域番号 |
20590459
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
越智 定幸 藤田保健衛生大学, 医学部, 准教授 (80268705)
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キーワード | 毒素原性大腸菌 / 易熱性エンテロトキシン / 病原プラスミド |
研究概要 |
毒素原性大腸菌(ETEC)H10407株のEntプラスミド、pEntH10407とブラジル・サンパウロの小児下痢症患者から単離されたETEC 25A-1株のEntプラスミドpEnt25A1の比較解析のため、pEnt25A1をトランスポゾン(Tn5)のカナマイシン耐性遺伝子で標識(pEnt25A1K)した。pEnt25AIKを種々の制限酵素で処理した後、反応液をパルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)にアプライし、消化断片を分離した。PFGEの各消化断片の分子サイズから計算されるpEnt25A1Kの分子量は、約95kbであり、pEntH10407よりも25Kb以上大きな分子サイズであることが判明した。この結果は、以前の未消化EntプラスミドのPFGEでのDNAバンドから計算された分子サイズのデータに一致した。一方、ケニアのマンデラ地方で発生した下痢症アウトブレイクの下痢症患者の便検体から、原因菌の分離を試みた。その結果、コレラ菌、赤痢菌、カンピロバクター属細菌、アエロモナス属細菌などの主要下痢原因菌は検出されず、本アウトブレイクの原因菌と考えられる大腸菌が分離されてきた。分離された大腸菌は、易熱性エンテロトキシン遺伝子、及び、耐熱性エンテロトキシン遺伝子を有するETEC、そして、凝集付着線毛遺伝子のレギュレーター遺伝子を有する腸管凝集性付着大腸菌(EAEC)であった。しかしながら、これら下痢原性大腸菌は、いずれもマンデラ地方の健常者の糞便からも分離されることから、アウトブレイクの原因菌ではない可能性も考えられ、下痢症アウトブレイクの原因菌の特定には更に詳細な検討が必要であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内外からの下痢原因菌の収集が行われ、既に全塩基配列を決定した病原プラスミドと比較解析をすべき病原プラスミド候補の実験データが得られた。また、ケニアにおける下痢症の疫学調査において、ケニア国マンデラ県で発生した下痢症アウトブレイクに関して検体から原因菌究明への研究が開始され、コレラ菌、赤痢菌などの下痢原因菌は分離されず、大腸菌による下痢症アウトブレイクを疑うに至った。
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今後の研究の推進方策 |
毒素原性大腸菌の病原プラスミドの塩基配列の決定と配列解析を行う。次に、病原遺伝子の検索結果から明らかになった病原因子と宿主大腸菌の病原性との関連について検討する。ケニアで発生した下痢症アウトブレイクの原因菌を究明するため、検体から分離される原因菌と疑われた大腸菌について生化学的、分子生物学的手法を用いて分類し、特徴付けを行う。また、下痢原因因子を明らかにし、プラスミドの下痢症発症への関与について調べるとともに、その下痢原因因子のケニアにおける下痢症発症との関連性について調べる。
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