研究概要 |
Salmonella enterica serovar Typhimuriumの染色体上に存在するSalmonella Pathogenicity Island 2の領域内に同定した新規の病原性遺伝子,spiCはマクロファージ(Mφ)の殺菌能に対する抵抗性やマウスに対する全身感染の成立に関与しているが,その機能は明らかでない.そこで,SpiCの機能を明らかにする目的でサルモネラ感染によりMφ内で変化する宿主因子の網羅的な解析をcDNAアレイ等の方法により行った結果,SpiCがシクロオキシゲナーゼ2, IL-10,サイトカイン抑制因子3 (SOCS-3)などの遺伝子発現の増強に関与し,さらに培養上清を用いたプロテオーム解析の結果,SpiCの鞭毛蛋白発現への関与が明らかとなった.そこで,鞭毛形成におけるSpiC関与のメカニズムとその意義を平成20年度の研究実施計画に基づいて研究を行った結果,以下の新たな知見を得た.1.SpiCのfliC遺伝子発現への関与をTaqManプローブを用いた定量RT-PCRやβ-ガラクトシダーゼを指標としたレポーターアッセイによるプロモーター活性を調べた結果,SpiCは転写レベルでfliCの発現に関与していた.2.fliC同様,クラス3に属するfliDやmotA遺伝子の発現を定量RT-PCRにより調べた結果,spiC変異株でその低下が見られた.3.鞭毛遺伝子の発現を正に調節しているマスター・レギュレーターであるflhD/flhC遺伝子への関与を定量RT-PCRおよびレポーターアッセイにより調べた結果,その影響は見られなかった.4.抗FlhDペプチド抗体を作製して,ウエスタンブロット解析によりその発現を調べた結果,spiC変異株においてその発現の低下が見られた.この結果から,SpiCはFlhDの発現に翻訳の段階で関与していることがわかった.5.fliC変異株を感染させたMφにおいて,SOCS-3発現の低下が見られたことから,spiC依存的なSOCS-3発現にFliCの関与が示された.さらに,その発現はp38およびERKシグナル伝達経路の活性化が関与していた.
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