宿主細胞侵入後に転写が昂進する赤痢菌の遺伝子群の一つであるospE2遺伝子およびその産物の解析から、OspE2は感染宿主細胞の形態維持に働き赤痢菌が細胞間拡散する上で有利な細胞骨格の維持を担っていることが示唆された。一方、apoptosisに至る感染細胞破壊の過程ではOspE2とは拮抗的に作用し細胞破壊へと導く因子の存在が想定される。本年度の研究としてまず、OspE2と拮抗する因子(形態変化roundingを引き起こすことに関与)としてVirAが感染細胞において形態変化(roundingの惹起)を生じさせることの確認を行った。赤痢菌が培養細胞に侵入する際に必須である巨大プラスミド上の領域約30kbを保持した変異株B+virFにipgB2あるいはvirAをそれぞれ単独で相補しても感染細胞は伸展した形体を保持していたが、B+virFにipgB2とvirAを同時に相補することで、感染細胞に形体変化roundingが発生することが確認できた。細胞内において、VirAは微小管の破壊を惹起し、IpgB2はRhoファミリーGTPaseのシグナルを干渉することが知られており、両者の機能が協調的に作用することで、roundingが惹起されるものと考えられた。 OspE2とこれらの因子の機能が拮抗的に作用することで感染細胞における形態変化が生じることが予想された。
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