研究概要 |
好中球CK16およびCK17の好中球からの回避機構の検討を行うため、オプソニン化の状態を確認した。菌体に沈着したオプソニン分子,補体および抗体の解析をウエスタン法ならびにFACSを用いて解析を行った。その結果、CK17においては補体C3bあるいはiC3b,およびIgGの沈着が認められた。また、FACS解析および蛍光顕微鏡観察からは補体依存的に好中球とCK17が接触していることが示された。しかしながら、効果的な貪食には至らなかった。K12株とCK17株との混在状態で好中球はK12を選択的に貪食する像が観察された。つまり、CK17の好中球貪食抵抗性は局所的なものであり、共存するK12株の貪食までは抑制しないことが示された。CK17は補体抵抗性を示すことを併せて考えると、CK17に沈着するC3bあるいはiC3bはなんらかの機構でオプソニンとしても、殺菌作用をもつ補体複合体としても機能が発揮されていないことが示唆された。CK17はK1莢膜産生株である。K1莢膜はその詳細な機構は未解明であるが、大腸菌に抗体のアクセスを阻害すること、補体の活性化を抑制し補体抵抗性および貪食機能抵抗性を示すことが知られている。CK17株のK1葵膜合成遺伝子の変異株を作成し、CK17と比較検討した。変異株は好中球との接触が向上し、貪食される効率が高まった。これは抗体沈着の阻害、C3bあるいはiC3bの沈着の阻害が確認されたことから、CK17好中球貪食抵抗性はK1莢膜によるものと考えられた。しかしながら、K1莢膜変異株においても高度血清耐性が維持されることから、新規の血清耐性機構を持つことが示唆された。
|