研究概要 |
どのサイクロフィリンがSARSコロナウイルスの増殖に関与しているのか明らかにするために、293/ACE2細胞およびHuh7細胞に各サイクロフィリン(サイクロフィリンA,B等)に特異的なshRNA発現ベクターを導入し、その後SARSコロナウイルスを感染させた。24時間後に培養上清中のウイルス量を、定量RT-PCR法、蛍光抗体法及びプラーク法によって定量したところ、少なくともサイクロフィリンAとサイクロフィリンBに対するshRNAを導入した細胞では、SARSコロナウイルスの複製効率が低下していた。中でもサイクロフィリンBに対するshRNA導入細胞では、低下の程度が最も大きかった。また、サイクロフィリンがウイルスのライフサイクルのどの点に関与しているのかを明らかにするために、サイクロスポリンAを用いてentry assay及びtime-of-addition assayを行った。entry assayについては、細胞を先にサイクロスポリンAで処理しておき、その後SARSコロナウイルスに感染させた。次に、感染2時間後に細胞からRNAを抽出しそこに存在するウイルスRNA量を定量RT-PCR法により調べたところ、この条件の下でのサイクロスポリンAによる抑制は非常に小さいことが分かった。time-of-addition assayにっいては、サイクロスポリンAが存在しない状態でウイルスを感染させ、3時間後にサイクロスポリンAを加えた。その21時間後に培養上清を回収しウイルス量を定量RT-PCR法によって定量したところ、サイクロスポリンAによるウイルス増殖の抑制が認められた。以上のことから、サイクロスポリンAの作用点はエントリーよりも後のステップであることが示唆された。
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