研究課題
サイクロスポリンAのSARSコロナウイルスの増殖抑制効果について、マウス感染モデルを用いて検討を行った。免疫抑制効果がマウスのサバイバルに関与しているかを明らかにするために、FK-506での検討も行った。SARSコロナウイルスを経鼻的に感染させ、その後薬剤を投与し、体重変動とサバイバルを観察したところ、サイクロスポリン投与群で体重減少率の低下と生存率の上昇が観察された。FK506投与群ではそのような効果が見られなかった。このことから、サイクロスポリンAには病原性発現抑制効果があることが明らかとなり、そのメカニズムは免疫抑制効果によるものではなく、ウイルス増殖抑制活性によることが示唆された。また、サイクロフィリンと結合するウイルス側因子の特定を目的として、mammalian two hybrid systemの構築を行った。予備的な試験を行ったところ、このsystemが適切に動くことが確認された。このことから、サイクロフィリンと結合するウイルス側因子の特定へ向けて、基盤を整えることが出来たと言って良いであろう。SARSコロナウイルスの複製を正に制御する宿主因子については今までにほとんど報告が無いため、本研究の意義は大きいと思われる。また、SARSコロナウイルスの複製にサイクロフィリンがどのように関わっているかを詳細に解析することで、新たなウイルス複製制御メカニズムとそれに関連する新たな宿主因子を発見できる可能性もあり、今後の研究の発展が期待できる。
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Antiviral Research 85
ページ: 551-555