研究概要 |
1.ヒトパラインフルエンザ2型ウイルス(HPIV2)とパラインフルエンザ5型ウイルス(PIV5)のF蛋白のアミノ酸配列のアラインメントを行い、PIV5のF蛋白の一次構造におけるF1中央領域(aa.223-366)を同定した。次に分子モデルを用いてPIV5のF蛋白3量体の立体構造におけるF1中央領域の位置を視覚化し、この領域のうち3量体の表面に露出しているアミノ酸群の位置を明らかにした。 2.三量体表面に露出しているF1中央領域のアミノ酸群を4つのドメイン(M1〜M4)に区分けした。この区分けに際しては、各ドメインが少なくとも10個の露出したアミノ酸から構成されていること,ドメインの両端のアミノ酸群がPIV5とシミアンウイルス41(SV41)のF蛋白間で保存されていることを条件とした。 3.前項(2)で区分けしたPIV5のF蛋白上のドメインを単独に、あるいは組み合わせてSV41のF蛋白の相同ドメインで置き換えたキメラF蛋白群を作製した。これらのキメラF蛋白とSV41のHN蛋白をHeLa細胞に共発現させたところ、2つのドメイン(M1とM2)をSV41のF蛋白のものに置き換えたキメラF蛋白が細胞融合を誘導することが判明した。また,3つのドメイン(M1,M2およびM4)をSV41のF蛋白のものに置き換えたキメラF蛋白もSV41のHN蛋白との共発現で細胞融合を誘導したが、微弱ながらHN非依存性の細胞融合誘導能を示すことが判明した。なお,これら2つのキメラF蛋白はPIV5のHNとの共発現でも細胞融合を誘導する能力を維持していた。 4.以上の結果から、F蛋白上のM1ドメイン(aa 234-246)とM2ドメイン(aa 278-285)がHN蛋白との相互作用に関わっていることが示唆された。
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