研究概要 |
HIV-1を含むレトロウイルスのポジティブー本鎖RNAゲノムはウイルス粒子内で非共有的に結合して二量体を形成している。HIVゲノムニ量体化及びゲノム組換えの機序の解明は、遺伝的多様性を主要な生き残り戦略としているHIVの制圧の端緒となり、ワクチン開発を実施する科学的基盤を提供する。本研究では、粒子内HIV-1ゲノムニ量体化をパッケージングと独立した形でとらえて解析することのできる実験系およびHIVゲノム組換え効率を定量できる系を独自に構築した。これらを用いて様々なHIV-1サブタイプ間のヘテロゲノム二量体化および組換えウイルス生成機構の解析を行った。サブタイプの中で遺伝的多様性の大きいグループN・O・チンパンジー由来SIVcpzとグループMとのヘテロゲノム二量体化効率比較から、遺伝的近縁度と二量体化効率は必ずしも相関しないことが明らかとなった。グループM内で遺伝的距離がほぼ等しいサブタイプA・B・C間のヘテロゲノム二量体化の程度を比較したところ、A-C問の反応はホモニ量体化(A-A,B-B,C-C)と同等の効率を示したのに対し、A-B,B-C問のそれは明らかに低下しており、サブタイプの組合せによって二量体形成の効率に差があることが示唆された。変異導入実験の結果二量体化開始部位(DIS)が効率決定に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。ゲノム二量体化効率と平行してヘテロゲノム間組換え効率を測定した結果、この二つの効率にほぼ完全な順相関が確認された。これはゲノム二量体化が直接ゲノム組換えを規定するという合理的な機購の存在を示唆している。このことは古くから予想されていながらこれまで直接的な証拠は示されておらず、今回の結果は大きな意義を持つと考えられる。
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