研究概要 |
ウイルス持続感染の成立、維持及び変異の機構を科学的に解析する為には、ウイルス細胞傷害誘導機構の解析が不可欠である。ウイルス持続感染能の高いウイルスは細胞傷害性の程度が低いことが明らかになった。ウイルス側の要因については昨年度解析したので、本年度はウイルス傷害性発現の宿主細胞因子について解析した。本年度は手に入る限りのProtein kinase阻害剤を用いて、ウイルスの増殖や細胞傷害性発現に対する作用を解析した。ウイルスとしては、Respirovirus, Rubulavirus, Influenzavirus, HIVを用いた。HPIV2誘導の細胞融合はRho kinase阻害剤では抑制され、C-kinase阻害剤では亢進されることが明らかになった。C-kinase阻害剤はHPIV2の増殖も亢進した。C-kinase阻害剤はHPIV3による細胞融合も増強した。このことはC-kinaseがウイルス誘導細胞融合を負に制御していることを示している。細胞融合能を欠如したHuman Parainfuruenza Type 2 virus(HPIV2)にRho kinase acivatorを作用させると、細胞融合が起り、多核巨細胞が出現することも明らかになった。特に、ウイルス増殖過程のどのステップがターゲットなのか、kinase阻害剤がターゲットとしている宿主細胞因子は何なのかについて解析をした。細胞骨骼系のウイルス誘導細胞傷害、特に細胞融合、発現への関与について解析する。また、我々が発見したウイルス細胞融合制御因子と細胞傷害性との内的な関連性を示す結果も得た。
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