研究課題
HIV-1のコードするNefは長らくエイズ病態形成への関わりが示唆されながらも実際の生体内での役割が未だに明白でないアクセサリー蛋白である。我々は、Nefの任意発現制御が可能な組換えアデノウイルスを作製してマイクロアレイ解析を行い、ヒトマクロファージ(Mf)でNefが高度に発現するとMfの自然免疫機能に関わる遺伝子(TLR5やIL-10Rβ等)の発現が低下することを観察した。本研究では、MfにおけるNef発現が実際にMfの自然免疫機能を障害するかどうかをin vitroで明らかにするとともに、ヒト血液系細胞が分化増殖する免疫不全マウス(ヒト化マウス)の体内においてHIV-1感染時のNef発現がMf機能に及ぼす影響を解析することを目的とした。今年度は、まず単球系の細胞株でNef発現量とTLR5のmRNAおよび蛋白発現低下のパターンを解析し、アレイの結果と一致することを確認した。しかしながら、強制的に発現させたTLR5はNefの抑制効果を受けなかったことから、TLR5の発現抑制はNefの間接的作用であることが示唆された。次に、初期培養MfにTLR5のリガンドであるflagellinを作用させた時に誘導される6種類の炎症性サイトカイン産生の違いをTLR4のリガンドで発現により低下する傾向があった。一方、ヒト臍帯血より分画したCD34陽性幹細胞を移入したヒト化マウスでヒト血液細胞の分化増殖を解析し、3か月以降にはヒトT細胞の増殖が確認されたため、蛍光標識HIV-1を感染させて生体内でのウイルス増殖と組織分布を多重染色フローサイトメーター及びqRT-PCR法でモニターする系を確立した。今後はNef発現によるMfのTLR5発現低下とサイトカイン産生変化に加え、Salmonella菌をモデルにしたphagocytosis機能の解析を行い、ヒト化マウスにおけるNefの作用を検証していく。
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