ヒト化マウス内で発生分化したヒトT細胞が抗原刺激に対して分裂増殖応答を示さない、IL-2を産生しないなどの機能不全状態にあることを前年度までに明らかにした。このヒトT細胞の機能不全がマウスMHCクラスIIとヒトMHCクラスIIのミスマッチに起因する可能性を考え、ヒトHLA-DRB1^*0405を発現するトランスジェニックマウスを作製し1ラインを樹立した。このトランスジェニックNOGマウスではヒトHLA-DRがマウスクラスIIの分布に従って発現し、胸腺上皮細胞でも発現が認められた。このトランスジェニックNOGマウス(HLAtg)、およびマウスMHCクラスII欠損マウスと掛け合わせたHLAtgMHCII(-/-)NOGマウスを作製しHLA-DRB1^*0405のハプロタイプを有する臍帯血由来血液幹細胞でヒト化を行った。このようなHLAtgマウス内ではヒト化後5か月では約50%程度のナイーブT細胞が存在し、抗原刺激に対して増殖応答を示すが、6か月後ではナイーブT細胞の割合は10%未満となり(逆にエフェクター・メモリーT細胞の割合が著増する)抗原刺激に対し、増殖応答を示さなくなった。これらのことから、HLAの発現のみではヒト化マウスのT細胞機能を正常化するには不十分であり、ナイーブT細胞がNOGマウスのリンフォペニア(リンパ球減少状態)を解消すべく分裂することがヒト化マウスT細胞の機能不全の原因であることが示唆された。
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