本研究では、Th2細胞記憶(メモリーTh2細胞)をモデルに用い、アレルギー疾患の病態に深く関与していることが予想されるメモリーTh2幹細胞の存在を証明することを目的とする。 本年度は、メモリーTh2細胞をCD62L、DX5、IL-2受容体β鎖、CXCR3の発現を指標に分画し、それぞれの機能の違いについて検討を行った。その結果、CD62L/CXCR3でメモリーTh2細胞を4分画することで、メモリーTh2細胞を機能の異なった細胞群に分けることが可能であることを明らかにした。アレルギー炎症の特徴である好酸球浸潤に重要なサイトカイン、IL-5はCD62L low/CXCR3 lowの分画からのみ産出される。一方、IL-4やIL-13はいずれの細胞群からも産出される。このことは、CD62L low/CXCR3 lowの細胞を生体内から除くことで、好酸球の浸潤を抑制できる可能性を示唆している。 そこで、次にCD62L low/CXCR3 lowの細胞の生体内における役割を証明するため、メモリーTh2細胞移入によるアレルギー性気道炎症モデルの確立を行った。まず、OVA特異的TCR TgマウスからエフェクターTh2細胞をin vitroで分化誘導し、それをヌードマウスに移入する。移入4週間後、脾臓よりメモリーTh2細胞を調整し、BALB/cマウスに再移入し、OVAを吸入させることでメモリーTh2細胞依存的アレルギー性気道炎症を誘発した。この系を用いて、移入するメモリーTh2細胞からCD62L/CXCR3の発現を指標に4分画した細胞をそれぞれ除去することで、アレルギー炎症病態形成における役割について解析する予定である。
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