MAPキナーゼ(MAPK)は、シグナル伝達分子として転写因子や他のキナーゼなどをリン酸化・制御し、炎症シグナル伝達においても重要な役割を果たすと考えられている。炎症シグナルは、いわゆる感染制御にとどまらず、生活習慣病など多様な病態に関わるとされる。本研究では、多様な細胞で働くMAPKの中でもERKとp38に注目し、その機能を遺伝子改変マウスを用いて解析することを目的とする。 ERKには、相同性の高いERK1とERK2のふたつの遺伝子が存在する。昨年度は、Bリンパ球でERK1、ERK2を欠く二重欠損マウスの作成・解析を行い、それがBリンパ球の分化に必須であることを見出した。今年度は、これとは別に、血球細胞や血管内皮でERK1とERK2を欠く二重欠損マウスのコンディショナルノックアウトマウスの作成を試みた。ERK1単独の欠損マウスは生存可能であるが、ERK2のコンディショナルノックアウトマウスは生存仔が得られず、胎生致死と考えられた。現在、二重欠損コンディショナルノックアウトマウスを作成中で、今後その表現型についての解析を行う予定である。 p38αに関しては、ヘテロノックアウトマウスで、高カロリー食投与後の体重増加の抑制や、血糖値上昇の抑制を認めている。この現象に血球細胞が関与するか否か検討するため、血液細胞、血管内皮特異的なコンディショナルノックアウトマウスを作成したところ、類似した表現型になり、今後解析を勧める予定である。
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