本年度は、まず、ヒトPD-1の結晶について解析を行った。前年度に作成したヒトPD-1の結晶はツインであり、X線結晶解析による座標決定が不可能であったため、抗体のFab領域との共結晶解析を行うことにした。そのために、ヒトPD-1の細胞外領域を大腸菌で封入体として発現させ、リフォールドしたものを陽イオン交換カラムクロマトグラフィーで精製し、マウスに免疫した。4回免疫後に脾臓細胞を摘出し、マウスミエローマ細胞株SP2/0と細胞融合した。HAT培地で選択し、抗ヒトPD-1抗体を産生するハイブリドーマを限界希釈し、モノクローナル抗体を得た。このモノクローナル抗体を酵素処理することにより、抗ヒトPD-1抗体のFab領域を得ることができた。そして、ヒトPD-1細胞外領域とFab抗体を結合させ、ゲル濾過で結合タンパクを精製し、結晶化を試みた。来年度は、この共結晶の構造解析を行う予定である。 次にγδ型T細胞上に発現する負の刺激分子であるIRp60分子のテトラマーの作成を行った。IRp60分子はPD-1と同様免疫グロブリンV領域様ドメインを有する分子であり、そのC末端側にBirA認識ペプチドを付加したものを作成した。このモノマーは大腸菌内で封入体として発現されたため、in vitroでのリフォールドを行い、陰イオン交換カラムクロマトグラフィーにより精製を行った。精製後、BirAでその認識配列内のリジン残基をビオチン化し、ストレプトアビジン-PEを用いてテトラマー化を行った。このIRp60テトラマー分子を用いて、リガンド分子を発現する細胞を探索した結果、いくつかの細胞株に発現が確認された。今後、このリガンド分子の同定を進めていく予定である。
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