本年度は、B細胞の分化・活性化を制御するCD40やToll様受容体のシグナルアダプター分子であるTRAF6と、IL-4やIFN-γのシグナル制御因子であるSOCS1のB細胞における生理的役割を解明するため、B細胞特異的遺伝子欠損マウスを作製し解析した。 B細胞特異的TRAF6欠損マウスのT細胞依存的抗原反応を調べたところ、抗原特異的抗体のアイソタイプスイッチや長期生存型プラズマ細胞の誘導に障害が認められた。また正常血清中のIgMやIgG2bが有意に減少しており、T細胞非依存的抗原に対するIgMの産生も低下していた。さらに、このマウスは成熟B細胞が減少しており、予想外にも腹腔内のCD5陽性B1細胞(B1-a細胞)が欠損していた。B細胞内のTRAF6は液性免疫応答に重要であるだけでなく、特定のB細胞分化にも必須であることが初めて明らかとなった。 一方、B細胞特異的SOCS1欠損マウスは、正常血清中のIgG1及びIgEが有意に上昇すること、また抗CD40抗体+IL-4共刺激による培養B細胞のIgE産生も亢進すること、更にこれらの表現型はSTAT6欠損マウスとのかけ合わせによって正常化することを見いだした。しかし、骨髄および脾臓、リンパ節でのB細胞の成熟分化には大きな影響がなく、メモリーB細胞の形成も正常であった。このマウスを各種抗原で免疫し抗原特異的抗体産生を調べたところ、 Th1応答を優位に惹起するCFAをアジュバントとした場合、各アイソタイプ抗体産生量は野生型マウスと同程度であった。しかし、 Th2応答を優位に惹起するAlumをアジュバントとした場合、抗原特異的IgEの産生が有意に上昇した。以上の結果から、 B細胞においてSOCS1は、IL-4/STAT6シグナルを抑制し過剰なIgE産生を抑えていることが明らかとなった。
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