本研究年度においては、昨年度の検討の結果明らかとなったPLC G1KOマウスにおける胚中心の形成能の低下とそれに伴う記憶B細胞数の低下、その後の記憶応答の低下という点に基づき、低いながらも産生されている記憶応答における抗原特異的抗体め親和性成熟の異常の有無について検討を加えた。その結果、1次応答において産生される抗原特異的抗体の親和性はコントロールマウスの場合とほぼ同レベルであり、また、記憶応答での親和性成熟についてもコントロール群と有意な差が認められなかった。また、このことを分子レベルで確かめるために、それぞれのマウス由来のNP反応性B細胞をソート後に、mRNAを抽出、逆転写、クローニングしてVH186.2の配列について解析を加えた。その結果、W33Lの突然変異を起こしているクローンの出現頻度にPLC G1KOマウスとコントロール群に間で有意な差はなく、少なくとも、VH186.2レパトワの中に限っては、体細胞当然変異の制御異常は認められないということが明らかとなった。これらの結果は、PLC G1KOマワスにおいても体細胞突然変異を誘発する機構は正常に働いていることを示しており、抗原に応答するB細胞の数の低下は、それらの細胞の増殖が阻害されているのか、もしくは生存性が低下しているのかのいずれかであることが明らかとなった。今後は、PLC G1KOマウスにおける免疫応答の異常が、増殖の低下に起因するのか生存性の低下に起因するのかを明らかにしていく予定である。
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