研究課題
本研究の目的は、粘膜免疫学の中の経口免疫寛容のコンセプトを用いた「舌下減感作療法」の免疫寛容誘導機構を解明し、その特徴を踏まえた抗原デリバリーシステムを開発することにより、科学的な根拠に基づいた医学的な効果と安全性があり、社会学的また経済的に優れたアレルギー予防・治療法を社会に提供することである。研究初年度である平成20年度は、マウスを用いてアレルギーにおける舌下減感作療法のモデル作成を試みた。抗原として一般に用いられているニワトリ卵白アルブミン(OVA)を用いて実験を行った。マウス1匹当たり50μgOVAを舌下に滴下し連続して10日間投与を行い、実験対照群としてOVA溶液の代わりにPBSを用いて同様の投与を行った。最終舌下投与の1週間後に20μgOVAとアラムによりマウス腹腔内にて再感作を行い、免疫寛容誘導の有無を再感作1週間後に検査した。その結果、マウス血清中の抗原であるOVAに対するIgEならびにIgGの抗体価は、抗原を用いた舌下減感作療法を行ったマウスにおいてPBSを投与したコントロール群と比較して優位に減少していることが明らかとなった。また抗原特異的なIgGのサブクラスの抗体価を検討した結果、IgG3を省く全てのIgG1、IgG2aとIgG2bにおいてコントロール群と比較して舌下減感作療法を行ったマウスにおいては有意な減少が認められた。一方、アレルギー誘導に重要なヘルパーT細胞の抗原特異的な増殖能を検討した結果、舌下減感作療法を行ったマウスでは抗原特異的CD4T細胞の増殖能はコントロール群と比較して優位に減少していた。これらの結果は、これまでヒトで行われている舌下減感作療法の治療法が動物実験でも可能であり今後の免疫動態の解析に有効であるモデルが開発されたことを示している。
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J Allergy Clin Immunol (In press)
Proc. Natl. Acad. Sci. USA (In press)
Vaccine 26
ページ: 6027-6030
http://www.rinshoken.or.jp/AI/