本年度は、研究期間4年のうちの3年目にあたる。 1.新カリキュラム、すなわち薬学6年制の第1期生は、5年生となり、長期実務実習が開始された。そこで、昨年度の研究成果をふまえ、危険認知力と問題解決力の開発のため、医療安全の分野で用いられてきた「危険予知トレーニング」(以下、KYTと略)を、新たな病院実習へと導入を試みた。KYTの課題は、病院での実際の処方箋に基づく調剤、服薬指導に関することについて作成した。臨床に則した教材を用いることにより、学生たちに、種々の場面における薬剤師の役割として薬物療法上の毒性発現やヒューマンエラーについての「危険予知」が重要であることの意識を促した。今年度の研究から、病院実習において、KYTが実習の省察やまとめのプログラムとして有用であることが明らかになった。成果は第20回日本医療薬学会年会や薬学教育協議会フォーラム2011等で公表した。 2.昨年度の実務実習事前学習でのKYTの実績をふまえ、今年度、第2期生(4年生)の事前学習でもKYTを行った。シラバス及びテキスト、プログラムのブラッシュアップを行った。 3.KYTの一定の有用性が明らかになったので、今後はKYTについてのワークショップ等でこの手法を広め、種々の状況下でのKYTの有用性を明らかにしていきたいと考える。その準備として、今年度は指導者向けの研修資料の作成を行った。新任教員や大学院生(Teaching Assistant)を対象にしたFaculty Development用のテキストを作成した際に、演習課題としてKYTを組み入れた。 来年度は、引き続きプログラムや教材のブラッシュアップ等を行い、最終的に研究成果を総括する。
|