今日の医療において患者の安全確保のために薬剤師の一層の活躍が求められている。それに対応して平成18年度の入学者から、薬剤師国家試験受験資格としての薬学教育年限が4年から6年に延長された。しかし、6年制薬剤師教育は緒についたばかりで、未だ発展途上にある。一方、医学は日進月歩であり、臨床現場では日々新たな問題が生じている。安全で質の高い医療を提供するには、(1)薬物療法上の問題を的確に把握し、(2)その問題を医療チームの中で解決する能力が必要であり、(3)科学的な「根拠に基づく医療(Evidence based medicine : EBM)」のための新なevidenceを創成する基本的態度と技能を身につけることが必要となる。さらに(4)これら薬物療法に潜む危険を予知することができれば、治療の安全性は格段に向上する。しかし現状の薬学実務実習は、既存の学術情報や技術習得に重点が置かれ、見学型に留まりがちで、上記の(1)~(4)の要素を涵養する体制にはない。 そこで6年制薬剤師教育において、問題解決と新たな医療の創生に力を発揮できる薬剤師の育成を目指し、カリキュラム開発を行う。問題解決のためにはその前提として問題を問題と認識できる能力、危険を危険と認識できる能力の開発が重要であると考えるが、従来この点はほとんど考慮されてこなかった。本研究では危険認知力と問題解決力の開発のため、医療安全の分野で用いられてきた「危険予知トレーニング」(以下、KYT と略)の手法を新たに薬剤師養成カリキュラムに導入することを試みる。あわせて、開発したカリキュラムの効果を検証する。
|