研究概要 |
本研究は移植医療従事者へのインタビュー調査等を通して医療者側の視点から本治療法が抱える問題点を明らかにし,今後の移植医療のあるべき姿について検討することを目的としたものである、予備調査において肝移植医を対象としたインタビュー調査を行った結果,生体移植をめぐる様々な倫理的問題は,生体肝移植よりも先行して開始された生体腎移植より看過されてきた問題であるとの共通した認識が見られた,そこで生体移植に通底する問題を明らかにするために日本の臓器移植医療全体の歴史を見渡しながら,わが国の生体肝移植の普及過程をまずは解明する必要があると考え歴史的検証へと研究方法を変更した. 2008年度は生体肝移植に関して記述された論考を収集し主要なものには解題を付し,『生体肝移植の変遷と成立過程に関する資料集(1989-2008)』を作成した.本年度はこれらの資料をもとに,日本の生体肝ドナーの産出過程を生体肝移植をめぐる技術および制度の歴史的検討を通じて明らかにし,それを踏まえて生体肝ドナーが直面する問題を考察する研究に取り組んだ.次年度には生体移植が主流として実施されるようになったわが国の臓器移植医療の歴史的経緯を集約した『日本における生体肝移植の普及過程』を研究成果報告書としてまとめる予定である.
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