研究概要 |
本研究は,進展する医療情報システムに注目し,民事司法システムの情報化に関する今後の可能性を模索しつつ,この医療情報システムを裁判所による訴訟審理,あるいは法律専門家の評価に耐え得るようなモデルとするべく,現時点でのその問題点を析出して確認し,併せて今後の方向性を模索することを目的とする。 本年度については,研究会およびアメリカ合衆国での調査を行った。研究会においては,問題点の洗い出しのため,研究会メンバーによる意見交換を行い,主として,以下の点が確認された。訴訟の場合、裁判所からも患者側からも情報公開の要請が来る。患者側に対しては、基本的には紙媒体で渡す。電子的には渡さない。電子化すればCD-ROMないしDVD1枚ですむと思われるが、病院側からすると範囲を限定して欲しいという要望がある。またデータは見せ方を変えると誤解を与えてしまうため、誤解を与えないように理解をしてもらうための見方もセットにならないといけない。生データを交付した時に医療行為の過程に沿った形でみるという仕組みを裁判所側はお持ちだろうか、というところが一番の論点である。 また,大阪大学大学院医学研究科附属病院医療情報部において,ヒアリング調査を実施した。大阪大学では,すべての医療情報を電子化するに際し,法的リスクの検討を進めているとのこと。平成21年3月には,アメリカ合衆国カリフォルニア州にあるカリフォルニア大学バークレー校に,Jesse Fried教授,および同大学平スティング校にRichard Marcus教授を訪問し,ヒアリング調査を行った。Marcus教授からは,民事訴訟手続における電子情報の取り扱いに関する最新の資料をいただき,次年度における重要な検討資料となった。
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