研究概要 |
本研究の目的は、医師の信頼度に応じて、対応する態度を変化させるように設計した医療面接技能取得用の患者シミュレータの開発と評価を行うことである。本年度は、我々が開発した患者シミュレータの評価を主として実施した。6年次医学生のクリニカルクラークシップの選択科目で、学生は5名程度のグループで4週間滞在し実習を行うが、本研究ではクリニカルクラークシップで医療情報学を選択した学生に対して、医療面接用患者シミュレータを用いた実習を行った。学生は実体験やポリクリで体験した症例、インターネットで公開されている闘病記、地域連携システムに蓄積された症例データ等を参考に、具体的な患者像を考案させ「医師の質問」及びそれに対する「患者の答え」等のマスターを作成させた。学生が作成した症例を患者シミュレータに登録し、グループ内で相互に医療面接を行わせ評価し合い、成果物の完成度を高めさせた。 本年度の医療面接用患者シミュレータを用いた実習では、延べ15名の学生が選択し、全員が4例の模擬患者を作成し、実習後のアンケートにて全ての学生が高い満足度を示していた。制作した症例は60症例となった。例示すると神経疾患(くも膜下出血,偏頭痛,重症筋無力症),循環器疾患(狭心症,大動脈解離),呼吸器疾患(気胸,COPD,アスベスト肺),消化器疾患(逆流性食道炎,胆石症,食道癌),小児疾患(アレルギー性紫斑病,周期性嘔吐症)・産科(子宮外妊娠)・内分泌疾患(偽性アルドステロン症,クッシング症候群,甲状腺機能低下・亢進症)・血液疾患(多発性骨髄腫),泌尿器疾患(尿管結石,頻尿),精神疾患(統合失調症)等の多岐にわたる症例を作成し相互評価できた。本システムは医学生のシミュレーション情報教育に欠かせないものとなった。
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