交通事故後の救急救命率は、地域における交通事故思索確立の指標として有用である。 平成20年度において、福岡県における年齢層別の交通事故後の救急救命率の地図上分析を行い、小児と高齢者に焦点を当てて解析を行い、福岡県の交通事故施策に具体的な提言を行ってきた。救急医療体制の地域格差は、都市部とそれ以外の地域において生じていることが明らかにされていることから、本報告では東京都において上述と同様な解析を行うこととした。地図上分析には、前回同様、Geographic Information System(GIS)を用いることとした。研究は、以下の手順ですすめた。 1.交通事故総合分析センターのホームページから東京都の交通事故に関する年齢層別基礎データの抽出 2.交通事故後の救急救命率の概算 3.救急救命医療へのアクセシビリティーに関するデータの抽出 4.二次医療圏毎のデータの算出と有意差の検討 5.仮説検定:交通事故現場から救命救急センターへのアクセシビリティーが高いほど交通事故後の救命救急率があがる 6.市町村別年齢層別救急救命率の可視化 結果として、東京都においては上記仮説は有意でないが、小児においてはこの傾向が若干認められる。年齢層別にみて、何れの年齢層でも交通事故の死亡数に二次医療圏間に有意差はなかった。アクセシビリティーの二次医療圏間の有意差は、区中央部と西多摩の間に認められた。全年齢層において、交通事故後の救急救命率が最も低いのは繪原村であり、行政的には、この地域の救急医療体制の充実を図るべきであることが明らかになった。
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