研究概要 |
医療経済評価で用いられている費用効用分析とその中でも重要なアウトカムである健康効用値について,海外の医療経済評価機関の現状とともに,国内外の論文をレビューし問題点を整理した.費用効用分析は2000年代でも特に2004年からその数が急増しており,年間500本以上の論文が掲載されていた.費用効用分析で重要な指標となるQALY計算のためのQOL指標である健康効用値については,EQ-5Dを用いて評価されたものが圧倒的に多く,臨床研究の中の約7割を占めている.この傾向はヨーロッパ諸国で特に強く,反面,北欧ではEQ-5Dに加えてHUIやSF-6Dなどを用いた健康効用値が多い傾向にあった.一方,医療経済研究の遅れが指摘されている国内に目を向けるとこの数は極端に少なく,それぞれ積算でも100本に満たない. ヨーロッパ諸国や北欧では,薬を中心とした経済評価が制度として整備されて来ており,その償還や価格決定に一定の割合で国が関与している.この国の政策としての医療経済の導入がこの分野の研究の発展に影響を与えていることが裏付けられた格好となった.費用効用分析における効用値や費用の評価はその国々において個別に評価された方がよく,日本においても近い将来に医療経済の観点が薬剤の償還や薬価算定に用いられる可能性を考慮すれば,この分野の研究をさらに発展させる必要が喫緊の課題として提起された.
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