研究概要 |
1. 面接調査(日本医事新報4526,精神科治療学26,人間学研究26):特別養護老人ホーム(以下,特養)に代表される高齢者の生活施設における"看取り"の中で,現場を困惑させている"おくり"の課題は無視できない。看取りの漸増,実務へ長けた職員の退職家族(遺族)からの要請の多様化を経て露になりつつあるもので,この"おくり"へ向けた困難の具体像を,特養施設長と葬儀社社員への半構造化インタビューを通して導き出し,改善策を検討した。葬儀社による技術指導の形を取った施設へのアウトリーチが,利用者の自己決定の促進とあいまって,事業としての確立,入居者・家族(遺族)ならびに職員の満足を並立させ得ることを明らかにした。死を境とする分業を越え,葬儀社による施設へ向けた商業的参入が,特養で普遍化し得る可能性を提起した。 2. 質問紙調査(第40回[2009]三菱財団研究-事業報告書):特養の看取りには制約が伴い,職員の熱意や利用者からのニーズの高まりへ過度に依拠しない取り組みが求められる。将来,高齢者施設の看取りに供する医療的な基盤整備は,介護報酬面での裏づけを得て,財政的な折合いとサービス向上の両立を果たす可能性があるが,施設内の医療職・設備強化のみで看取りの困難を解決することは容易でない。在宅療養支援診療所の活用や役割の拡大,機能別協力医療機関の設置努力,施設利用前のかかりつけ医の継続診療など柔軟な対応が必要である。 3. 調査の調査(厚生の指標57[6],神経内科73,武庫川女子大学紀要[人文.社会科学編]58):特養を対象として調査を行わんとする者は,自らの行為が職員や利用者への負荷の上に成り立つことを弁えねばならない。調査「技術」に関する論点へ着目し,論文の上梓や学会での発表を終えることで研究者が満足してしまうことなく,調査を社会に活用し得る成果として広く知らしめ,現場へ還元しようとする姿勢が欠かせないことに言及した。 4. 施設職員と学生の調査(日本社会福祉教育学会誌5):医療-介護(福祉)協働に関する両者の意識を検証した。
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