研究概要 |
本研究の主題となるDPCで考慮されている重症度は、あくまでも医療資源の必要度から判断されるものである。その為臨床的な重篤度と必ずしも対応しない場合があるとされている。本研究においては、DPC分類の精微化とDPC分類の妥当性を高める為の重症度のより妥当な評価の検討を試行した。次に、臨床的な重症度とDPCから得られる医療資源の必要度からみた重症度との関連の分析を試行した。 当該年度においては発症から治療までに要する時間が爾後に大きな影響を及ぼす急性冠症候群(Acute Coronary Syndrome,以下ACS)症状を呈する患者(H19.7~H.20.12に聖マリア病院ERに搬入されたACS患者110名)を対象に、診療情報から得たマイクロデータに基づき、救命救急センター到着時から(1)確定診断時刻、(2)検査室到着時刻、(3)検査開始時刻、(4)治療開始時刻の4つの時刻の経過時間が患者の転帰に影響を及ぼすという仮説を検証すべく実証分析を行った。(1)転帰をACS症状の患者の予後を表す変数として捉えた場合、特に、「搬入から確定診断までの時間」と「PCI開始までの時間」を短縮することが患者の予後の改善にとって正の効果が強いことがわかった。また「ER滞在時間」の短縮も患者の予後に効果的であるという結果が得られた。(2)初期担当医が循環器内科医であることが、「搬入から確定診断までの時間」短縮に特に効果的であり、また「ER滞在時間」と「PCI開始までの時間」の短縮にも効果的であることがわかった。(3)勤務形態が日勤である場合の方が、深夜勤・準深夜勤である場合よりも、「ER滞在時間」と「搬入から確定診断までの時間」までの時間の短縮に非常に効果的であることを実証した。 以上より、ACS症状の患者にとってER到着時に循環器内科医やその他の医療スタッフが充実していることが治療開始までの時間を短縮し予後の改善に貢献するとの意義、重要性を指摘した。
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