本研究の主題となるDPCで考慮されている重症度は、あくまでも医療資源の必要度から判断されるものである。その為臨床的な重篤度と必ずしも対応しない場合があるとされている。本研究においては、DPC分類の精微化とDPC分類の妥当性を高める為の重症度のより妥当な評価の検討を試行した。次に、臨床的な重症度とDPCから得られる医療資源の必要度からみた重症度との関連の分析を試行した。 当該年度においては結腸癌の入院症例データにより医療資源投入コストの差異について検証した。結腸癌の入院形態には治療計画に基づく予定入院と、腸閉塞や穿孔症などの合併症を伴う緊急入院がある。緊急入院は予定入院に比して重症例が多く、投入される医療コストも高額になると予測される。しかしDPCにおいては、入院形態は反映されない。 S病院における2006~2007年のDPCデータを用い、主病名が結腸癌による入院患者延べ193件(実人員78名)を解析対象とした。緊急入院は予定入院より、手術例が多く在院日数は長かった。予定入院においては手術の有無によって医療コストに有意な差があったが(p<0.001)、手術例に限ってみると、入院形態の違いによる統計的有意差はみられなかった(p=0.52) 緊急入院では在院日数が長くなることで総体的なコストの増大となるが、手術例に限った1日当たりの医療コストとしては入院形態による影響は少ないと考えられる。直接的な投下医療資源に要する医療コストに関する包括評価において、今回の結果からは入院形態を考慮しない場合でも妥当と考える。しかしながら、緊急入院では救急体制に携わる職員の配置コスト等に関しても考慮する必要性が考えられ、更なる検討が必要である。
|