諸外国の病院マネージメント手法の比較をするための調査項目を検討した。主な調査項目は(1)病院背景、(2)病院の特徴、財務に関する特徴とパフォーマンス、(3)人材育成と学習、(4)意思決定、(5)患者の視点などで、全項目数は100項目ほどである。最初に和文で作成し、さらに英訳を行った。本年は、シンガポールのアレキサンドラ病院、タイ国のサムティベート病院、ウェタニー病院、サミテベーシーナカリン病院、チュラロンコン大学病院の病院マネージメント手法を調査した。アレキサンドラ病院では、バランスドスコアカード、シックスシグマ、5S、バリューチェイン分析などの手法を用いて医療および病院運営の改善を行っている。その成果は、インターナルラボに提示し、院内職員の共有情報にして病院改善を推進した。患者にとっての医療というバリューを生かす視点が重視されていた。タイの病院は、すべてメディカルツーリズム(医療旅行)を主眼にして運営を行っていた。メディカルツ-リズムを行う戦略はSWOT分析によってタイ国医療の強みおよび機会をうまく利用していると考えられた。すなわち、欧米で高度な医療技術を習得した医師を確保することにより医療レベルを高くし、医療費は比較的安く、アクセスは迅速で、待遇はホテル並みという特徴を示した。医療が終わった後はリゾート地で健康回復を行うというプロセスである。タイ国医療の売り込みと外貨獲得を目的とした戦略がうかがわれる。タイ、シンガポール両国では、マネージメント手法であるSWOT分析を用いて自国及び自院の強みを分析し、医療という価値を連鎖されるプロセスを重視している。これらの考え方および実践方法はこれからの日本の病院マネージメントに有用な視点を与えてくれると考えられた。
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