研究概要 |
本研究の目的は日本の医療体制の更なる改善を図るために病院管理の必要性に着目し、国際的見地から諸外国の主要な病院の管理手法と医療成果とを視察調査し、比較研究の上、効果的な管理手法を提案することである。2009年7月15日に名古屋国際会議場で行われた第277回日本医療・病院管理学会例会において、2008年視察調査を行ったタイ、シンガポールの調査結果を発表した。タイでは、外貨獲得を国策として外国人を対象としたメディカルツーリズムを行っていたが、それを行うにあたって、SWOT (strength, weakness, opportunities, threats)分析による病院の存在価値及び位置づけを明確にした。シンガポール・アレキサンドラ病院では病院マネジメントを良くするためにSWOT、BSC、Six Sigma、6Sなどの手法を活用し、JCIを獲得、良質な医療を提供しようとする姿勢が見られた。両国とも、メディカルツーリズムを通して外貨を取得し国家を富ますことにより、一般的医療の改善を行おうとする国家戦略が窺われた。病院マネジメントと医療をよくするために本研究で着目している病院管理手法、特にBSC (balanced score card)をよく使っていることなどを明らかにした。 2009年9月には中国北京の清華大学玉泉医院(清華大学第二付属医院)と北京中医薬大学東方医院を視察調査した。調査は病院概要およびマネジメントに関する項目((1)歴史、(2)病院マネジメント手法、(3)病院機能、(4)ITなどのインフラ整備、(5)中国における医療制度)であった。両病院とも歴史は10年ほどで比較的新しい病院であったが、治療費が日本と比べ著しく安かった。両院とも病院情報システムの整備は不十分で、IT化の遅れが目立った。経営学的にはバランスは取れており、健全なマネジメントと言えるが、社会的観点からは農村部との医療格差が著しい中で、医療の公平性と質の向上を目指した医療提供体制の構築が喫緊の課題となることが分かった。そういう観点から病院マネジメント手法の活用は十分とは考えられなかった。
|