研究概要 |
初年度から2年目は、手術で摘出された乳癌組織から抽出したタンパクを用いて二次元電気泳動の条件設定を行った。乳がん組織中の蛋白発現パターンを飛行時間型質量分析計(SELDI-TOF MS)を用いた網羅的蛋白解析のための条件を探った。 至適条件として、一次元電気泳動では膨潤液に添加するタンパク量30μgでpHレンジを3-10,電圧を500v1時間、1000v1時間、8000v2.5時間が最も良い結果であった。二次元電気泳動は10mA/gel 1.5時間で明瞭な泳動パターンが得られた。 組織間のタンパク発現量の差を客観的データで比較するため、定量的二次元電気泳動法としては2D-DIGE(2 dimensional differential gel electrophoresis)を選択した。 がん組織から得られたタンパクおよび非がん組織から得られたタンパクをそれぞれCy3およびCy5という2種類の蛍光色素で標識し、二次元電気泳動を行ってそれぞれの組織中の蛋白量の差を比較した。 2010年度は、実際の乳癌患者の手術材料を2D-DIGE(2 dimensional differential gel electrophoresis)で解析した。10名の患者で行った結果、がん組織と非がん組織の間で蛍光色素の量がことなるドットが多数認められた。これらはがんで発現量が変化する蛋白として重要であるため、今後症例を増やして普遍的なドットに関しては、タンパクの同定を行ってがん化の過程の究明に発展させたい。 今後は、この手法を用いて薬物治療前の組織中のタンパクの解析を行い、薬物反応性に重要なタンパクの同定を行う予定である。
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