研究概要 |
これまでの研究で、C型慢性肝炎に用いるリバビリン(RBV)の場合、全血濃度は血漿濃度の約30倍であり。患者によっては投与終了後6ヵ月以上経過しても血中から検出されるケースがあることを明らかにした。催奇形成を起こす血中RBV濃度は明らかでないが、少なくともこのような症例では、添付文書記載の避妊期間である「投与終了後6ヵ月」でも安全性を担保する期間として十分とは言えないであろう。このような症例は、RBV療法を受けた患者の約20-30%に認められるが、その判別が避妊期間の検証に必要である。 RBVの細胞内取り込みには、核酸トランスポーター(SLC29A1)が関与しており、RBVの赤血球内濃度や副作用(溶血性貧血)と関連すると考えられる。申請者らは、ヒト赤血球を用いたin vitroの実験で、SLC29A1の活性が高いほどRBVの赤血球内濃度が高まり、赤血球の有棘状変化やフォスファチジルセリンの膜表面への露出(アポトーシスの誘導)を促進し、貧血のリスクも高まることを明らかにした(Biol Pharma Bull, 2009)。このことは、SLC29A1活性を評価できれば、RBVの赤血球内蓄積の予測が可能となり、貧血症例や6ヵ月以上の避妊期間を要する患者の識別に応用できることを示している。SLC29A1遺伝子には多型(-706G>C)が知られており、mRNA発現との関連が指摘されている。本多型と末梢血リンパ球に発現するSLC29A1 mRNAとの関連を調べたところ、SLC29A1の-706G/Gと比較してG/Cでは、SLC29A1 mRNAが有意に低いことが明らかとなった。今後、本多型が赤血球RBV濃度やSLC29A1タンパク発現に及ぼす影響を調べ、RBV治療における避妊期間の検証に利用したいと考えている。また、SLC29A1の基質薬剤であるゲムシタビンについても検討を開始したい。
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