研究概要 |
【概要】がん薬物療法における薬剤誘発性不整脈QT延長の頻度と臨床要因,QT延長を誘発しやすい抗がん剤あるいはレジメンを明らかにするために,乳がんに対するFEC療法(フルオロウラシル,エピルビシン,シクロフォスファミド)および胆道がん・膵臓がんに対する塩酸ゲムシタビン療法を受ける患者を対象に,治療前後の心電図により不整脈およびQT間隔の延長をスクリーニングした.おもな薬剤誘発性QT延長関連遺伝子との関連も調べた・【結果】研究期間中に乳がん患者34症例に153回のFEC療法を行い,うち研究参加の同意を取得できた計131回を対象とし,QT間隔の評価可能な心電図検査を計127回施行した.FEC療法の1サイクル目から6サイクル目までのすべてのサイクルで,治療後のQT延長が有意差をもつて示された:1コース目27例422±16(前)/439±18(後),2コース目28例426±17/438±18,3コース目26例431±19/447±17,4コース目27例434±20/450±18.QT延長の有害事象グレード分類は,グレード0は19人,同1は10人,同2は5人,同3は0人であった.化学療法後に臨床上問題となる不整脈は認めなかった.当該年度では主に,薬剤誘発性QT延長関連遺伝子であるカリウムチャネル遺伝子(KCNQ1, KCNH2)に存在する4つの一塩基多型と各患者のQT延長の程度との関係を調べたが,有意な相関性は認めなかった.なお,塩酸ゲムシタビン療法を受けた症例の解析は中途であるが,明らかなQT延長の傾向を認めていない.研究成果は英語論文として投稿した。
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