研究概要 |
早産・低出生体重児の無呼吸発作の治療に用いられるアミノフィリンの有効で安全な使用法を医療現場に提供するため、本研究は、1) 構築した病態モデルの妥当性を検証し、2) 病理組織学的観察、血液生化学的surrogate markerの特定、薬物濃度モニタリングなどの結果を総合的に解析して、本剤による中枢神経傷害の機序を明らかにし、3) その機序に基づいた中枢神経傷害の予防・軽減法を確立することを目的に検討する。平成21年度は、昨年度確立した病態モデルを用い、アミノフィリンによる低酸素時での傷害メカニズムの解明に関して調査した。さらにアミノフィリン以外の無呼吸発作治療薬、すなわちカフェインおよびドキサプラムに関して中枢傷害性に関して評価した。 動物を麻酔下人工呼吸器により1回換気量を制御し低酸素血症群では動脈血酸素分圧(PaO2)を40-60mmHgに、正常群ではPaO_2を80-100mmHgに調節した。ニッスル染色による病理組織学的に、血清中CK-BB活性・脳脊髄液中神経特異的エノラーゼ活性測定により中枢神経傷害を評価した。アミノフィリン(10mg/kg,i.v.)投与により、正常換気群では顕著な変化は見られなかったが、低酸素血将軍では中枢神経傷害パラメーターの有意な変化が見られた。このとき、脳組織中の過酸化脂質と酸化-還元型グルタチオン比を調べたところ、過酸化脂質の有意な上昇と酸化-還元型グルタチオン比の低下が見られ、酸化ストレスが誘発されていることが示唆された。カフェイン(40mg/kg,i.v.)およびドキサプラム(100mg/kg,i.v.)の投与では、比較的高用量での投与にもかかわらず、アミノフィリンで見られたような顕著な中枢神経傷害は見られなかった。
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