研究概要 |
原発性胆汁性肝硬変(PBC)患者148名と年齢と性別をマッチングさせた健常者148名を対象に,発症に関与する遺伝子の同定を試みた。また,PBC患者を重症度からnon-jaundice stageとjaundice stageに分類し,重症化に関与している遺伝子の同定も試みた。候補遺伝子として胆汁酸の合成や排泄に関連するMDR3・RXRβ・LXRα・FXR・CYP7A1・BSEP・HNF-4α・MRP2の計8つの遺伝子多型を解析し,患者群と健常者群間で,あるいは重症度別に分けた患者群間で多型の出現頻度の有意差検定を行った。 MDR3内に存在するSNPsの中から7つをtag SNPsとし, PCR-restriction fragment length polymorphism法とPCR-direct DNA sequencing法で多型解析を行った。有意差を認めた3つのSNPsを組み合わせてhaplotypeおよびdiplotypeを構築した。その結果, Hap 2/Hap 2 diplotypeの出現頻度は最も重症であるjaundice群で有意に高く(P =0.0003, odds ratio =17.73),重症化感受性遺伝子の一つであることが示唆された。 同様な解析の結果, RXRβ, LXRα, FXR, CYP7A1, BSEPおよびHNF-4αも重症化感受性遺伝子であった。さらに, HNF-4αはPBCの発症にも関与する疾患感受性遺伝子でもあった。 今後も疾患感受性および重症化感受性遺伝子を同定し,有意差を認めた遺伝子多型を組み合わせて,感度・特異度およびオッズ比の高い遺伝子診断法を確立する予定である。
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