ヒト変異ウロモジュリン遺伝子トランスジェニックマウスにおける遺伝子発現変化の網羅的解析 家族性若年性高尿酸血症性腎症モデルであるヒト変異ウロモジュリントランスジェニックマウス(変異Tg)におけるmRNA発現量を、ヒト正常ウロモジュリントランスジェニックマウスを対照としてDNAマイクロアレイを用いて解析した結果、発現が亢進する遺伝子としてSrd5a2が検出され、定量PCRによってSrd5a2遺伝子の約3倍の転写亢進が確認された。Srd5a2遺伝子の遺伝子産物はテストステロンをアンドロゲン作用のより強いジヒドロテストステロンへ変換する酵素である5'-レダクターゼであり、変異Tgマウスの腎臓ではアンドロゲン作用が亢進している可能性がある。その裏付けとして、変異Tgマウスの腎臓においてアンドロゲンにより誘導される遺伝子であるGusb、Odc1、Cyp4a12aの各遺伝子の転写亢進がDNAマイクロアレイおよび定量PCRによって確認された。前年度に尿酸再吸収トランスポーターSlc22a12遺伝子の転写増加が定量PCRで認められたことと併せて、変異TgマウスではSrd5a2遺伝子の転写亢進によりアンドロゲン作用が亢進して、尿酸再吸収トランスポーターの発現亢進が生じて高尿酸血症をもたらしていることが予想された。また、Cyp4a12a遺伝子の転写亢進に伴って20-HETEの産生が亢進し、腎障害および腎嚢胞形成をもたらす可能性が考えられるため、今後尿中20-HETE測定により20-HETE産生亢進の証明と5'-レダクターゼ阻害薬による治療の可能性について検討していく予定である。
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