【目的・方法】ワルファリン(WF)治療における遺伝子検査の臨床的有用性を明らかにする目的で、アジア人(日本人と中国人)患者を対象としてWF投与前にCYP2C9とVKORC1遺伝子変異検査後、WF導入投与量を設定する前向き試験を行った(コントロール群はなく、ジェノタイプ群のみの試験である)。得られた血漿試料を基に抗凝固効果の主体であるS-WF血中遊離形濃度、Normal Prothrombin(NPT)活性(凝固活性の指標)及びINR(抗凝固効果の指標)を測定して、WF導入後血中遊離形S-WF濃度が上昇し(体内動態)、次いでNPT活性の低下に伴いINRが上昇する過程(感受性)に関する過程について、モデル構築を行い母集団解析法を用いて解析した。その結果、体内動態と感受性の各過程における患者間変動要因を抽出でき、更にWF導入期におけるover-anticoagulation(INR≧4)の影響因子に関して検討を行った。 【結果】アジア人では、WFの体内動態に関してはS-WFの定常状態における遊離形血中濃度を決定するWFの肝代謝活性(S-WFの遊離形経口クリアランス)に対してCYP2C9^*3変異と体重が有意な影響因子であった。一方、WFの感受性に関しては、投与前の凝固活性(NPT0)とIC50で規定でき、NPT0に対しては年齢が、IC50に対してはVKORC1変異が影響因子として抽出できた。 更に、WF導入期のINR≧4には、感受性側の要因ではなくWFの体内動態(S-WFの遊離形経口クリアランスが小さいこと)が有意な影響因子であることを明らかにできた。
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