非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)による小腸傷害の病態に関する検討を行い、平成20年度は以下のような研究成果が得られた。 1)NSAID誘起小腸傷害の発生がホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害薬により有意に抑制された。また、この機序には一酸化窒素(NO)/cGMPを介した腸管における粘液および水分の増大による腸内細菌の粘膜内への侵入あるいは接着の阻害が関与しているものと推察される。 2)デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘起大腸炎の治癒において、誘導型NO合成酵素(iNOS)由来のNOが促進的に作用していることが判明した。また、その機序にはNOを介した血管内皮増殖因子(VEGF)の発現増大が関与しているものと推察される。同様の現象はNSAID誘起小腸傷害の治癒においても推察されており、NOは傷害性および保護・治癒促進という二面性が存在することが改めて確認された。 腸管マクロファージの関与については、当初予定していたクロドロネート含有リポソームを用いた腸管マクロファージ欠損モデルの作製を試みたが、本法では腸管筋層マクロファージは部分的に低下させることができたものの、粘膜固有層のマクロファージを低下させることは出来なかった。現在、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)の先天的欠損マウス(op/op)を用いた検討に変更し、予備試験を実施中である。
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