1)ALDH2のgenotyping ALDH2の酵素活性に対して著しい影響を与えるGlu504Lysを導く一塩基多型(single nucleotide polymorphism ; SNP)の判定に関して、ゲノムDNAの抽出をせずに、末梢血からPCRダイレクトシークエンシング法によって当該遺伝子多型(ut/wt、wt/mt、mt/mt)を判定する再現性の高いハイスループット系を確立した。また、血液の保存温度や凍結・融解回数、反応への持ち込み血液量が本判定方法におけるPCRの段階へどのような影響を与えるのかを検討し、最適な条件を見出した。さらに本判定方法を用い、二十数人の血液試料よりALDH2の当該遺伝子多型を決定した。 2)ALDH2のSNP型を簡便かつ安価に推定するための基礎研究 ALDH2の活性は飲酒時の耐性と非常に良く関連する。本人の飲酒歴や飲酒に対する自覚的な反応とALDH2活性は非常に良く相関することが確認できた。Wt/wtでは、ほぼ問題なく飲酒が可能であった。予想通りmt/mtの被検者はほぼ全く飲酒が不可能であった。Mt/wtではその中間であった。 3)ニトログリセリン(GTN)に対する反応性の評価 GTNが生体内でどの程度反応するかを調べるため、エコー図法による上腕動脈の反応を評価する手技を確立し、ALDH2の多型性によるGTNの反応性の差異を検討した。その結果CTNからNOを遊離し血管拡張を起こさせる要因と報告されているALDH2遺伝子型の、mt/mt、mt/wt、wt/wt群(各10例)はすべてで同様にGTNに対する反応が認められた。すなわちヒトにおいてはGTNからNOを遊離させるメカニズムはALDH2による経路以外にも存在する。
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