引き続き宮城県における悪性リンパ腫症例の臨床病理学的解析行った。(1)B細胞性リンパ腫におけるCD20発現頻度では、初発例(825/854例)に比して再発例(86/102例)では高頻度にCD20発現の欠失が確認された(96.6%vs84.3%、p<0.01)。免疫組織化学検査とフローサイトメトリーを施行した例では、670例中42例(6.3%)でCD20発現が両者で異なって認められることが明らかとなった。理論的にはフローサイトメトリーによる細胞表面の発現が抗体療法の奏功に重要と考えられるが、臨床的に治療効果に影響を与えるかを検討するため、今後臨床情報を解析する予定である。(2)希少疾患である腸管症関連T細胞リンパ腫の臨床病理学的解析を行い、長期生存例はいずれもCD56陰性例であり、CD56発現陽性例では腸管以外の節外病変が多く認められ、原発部位である腸管病変の制御よりも節外病変(特に中枢神経浸潤)が予後に影響することを示した。(3)濾胞性リンパ腫においてBACH2発現がt(14;18)(q32;q21)転座陽性群に高頻度に認められ(転座陽性群51.6%vs陰性群28.6%、p<0.01)、BACH2発現陽性であることが予後良好を示す因子であった。このことはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫とは異なる知見であり、BACH2が制御するとされる癌抑制遺伝子PRDM1等についても免疫組織学的検索を進めている。
|