研究概要 |
【目的】動脈硬化症のハイリスク群である慢性透析患者で、LDLのリン脂質(PL)酸化物が増加しているか、リン脂質転送蛋白(PLTP)活性が増加しているかについて検討した。 【方法】慢性透析患者13名と正常健常者17名において、12時間以上絶食後の空腹時に採血した。血清を分離し、PL酸化物(酸化LDL:ox-LDL)およびPLTP活性測定用の検体は-80℃に凍結保存した。血清PLは酵素法で、LDL-Cはホモジニアス法で測定した。酸化LDLは抗酸化LDLモノクローナル抗体(DLH3)を用いたELISAで測定した。PLTP活性は、まず(1)ドナー粒子(蛍光標識したリン脂質とクエンチング分子を含む)とアクセプター粒子の混合溶液に、凍結保存していた血清を加え、血清のPLTP活性により蛍光標識したリン脂質だけをアクセプター粒子に転送させて蛍光を発光させ、蛍光光度計(励起波長465nm、蛍光波長:535nm)で測定した。 【結果および考察】透析群のPLとLDL-Cは健常群より低値だったが(175±39vs.222±28mg/dL,p<0.001;78±19vs.118±25mg/dL,p<0.001)、ox-LDLには差がなく(12.0±11.6vs.8.1±5.5U/mL)、ox-LDL/PL比とox-LDL/LDL-C比は、透析群で高値だった(0.15±0.11vs.0.07±0.04p<0.05)。PLTP活性は、透析群で有意に高かった(11.6±3.2vs.8.9±4.0pmol/μ1sample/lhr,p<0.05)。慢透析患者では酸化ストレスが増加して酸化PLがLDLに増加し、これが高いPLTP活性でHDLへ転送されている可能性が示唆された。 【結論】慢性透析患者では血清PLが低下しているにもかかわらず、PL酸化物に対する抗体で捉えた酸化LDLの割合が増加している。慢性透析患者のPLTP活性も高く、透析患者のHDL代謝黒堂の背景にリン脂質の酸化物を介した機序の関与が示唆きれた。
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