研究概要 |
本研究は、炎症反応の中核をなす転写因子NF-κB活性化状態を病院検査室で検査できるように、高感度・迅速性を有する測定法開発を目的とする。本年度は、計測原理の基礎的検討を行い、測定プロトコールを構築した。以下に研究実績をまとめた。 (1) 全血からの迅速なリンパ球核蛋白抽出法開発:7mlEDTA-2K採血管で採血、溶血剤で赤血球を除去した後、白血球吸着フィルター膜吸引操作によるリンパ球分離法を開発し、定法のフィコールによる遠心分離による白血球層分離法と比較検討した。その結果、本フィルター法は5分間という迅速性が実現し、高品質なリンパ球核抽出蛋白が得られた。 (2) 1分子蛍光相関法(FCS)によるNF-κB解析基礎検討:リコンビナントNF-κB蛋白と蛍光標識プローブと反応させた後、CSF測定機器(オリンパス社)を用い1fLに設定した観測領域内ブラウン運動を平均拡散時間で計測した。検出特異性はプローブに変異を入れたもので評価できることを確認し、NF-κBとプローブの非結合状態から結合状態の平均拡散時間遅延は500usecであったことより感度の高い測定系であることを明らかにした。 (3) FCSによる核蛋白内NF-κB定量計測法確立: HeLa細胞、Jurkat細胞にTNF-α刺激を行い経時的にIL-6、IL-8, IL-18をELISA法、NF-κBをFCS法とELISA法で解析した。その結果、NF-κBは刺激30分後にFCS法にて活性化増加が検出された。また、IL-6、IL-8, IL-18は刺激4時間後より有意な上昇を認めた。以上、炎症性サイトカインの上昇予測に、本FCS法によるNF-κB活性化測定が有用であるという結論が得られた。
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