研究概要 |
肝性リパーゼ(HL)は脂質代謝において重要な酵素の一つであり、その活性増加は、メタボリックシンドロームなどにおける低HDLの原因の一つと信じられているが、いまだ、その生理的役割の詳細は明らかでない。その理由は、本酵素の活性の測定系が煩雑であることに大きく起因する。最近、我々はその活性を簡便に測定できる系を確立した。39名の男性脂質異常症患者(age51±18歳BMI24.3±2.8kg/m^2, TC265±76, TG330±418, HDL-C46±18mg/dl,FPG102±18mg/dl, HbAlc5.7±1.5%)を対象として、ヘパリン静注後血漿(PHP)中のHL活性を測定し、体格指数(BMI)、脂質代謝、糖代謝マーカーとの関係を調べた。HL活性は我々の開発した発色法を用いて測定した。HL活性はHL蛋白量とよく相関した(r=0.90, p<0.0001)。HL活性はBMIと正相関(r=0.33, p=0.04),TGと正相関(r=0.39, p=0.01),TCと正相関傾向(r=0.26, p=0.11),HDL-Cと逆相関傾向(r=-0.27, p=0.09)を示した。一方、FPGやHbAlcとは相関を示さなかった。(それぞれ、r=0.04, p=0.8; r=0.11, p=0.52)。一方、空腹時インスリン値とは正相関傾向を示した(r=0.37, p=0.06)。アポ蛋白との関係では、アポC2、C3と正相関(それぞれr=0.42, p<0.001; r=0.37, p=0.02)。アポA2と正相関の傾向を示した(r=0.29, p=0.08)以上から、HL活性はメタボリックシンドロームの背景に存在すると考えられるインスリン抵抗性が存在するときに増加する可能性が示唆された(740字)。
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