研究概要 |
リポ蛋白リパーゼ(LPL)、肝性リパーゼ(HL)は脂質代謝においてkey enzymeである。それらの活性測定は、酵素が遺伝性に欠損した病態の把握のみならず、家族性複合型高脂血症などの脂質代謝異常症、メタボリックシンドロームなどの病態把握に必須である。Angiopoietin-like protein-3(ANGPTL3)は、マウスにおいて、LPL活性を阻害する因子として注目され、トリグリセリド(TG)と逆相関する一方、ヒトでは、HDL代謝と深く関与することが注目されている。sdLDLはサイズの小さなLDLで催動脈硬化性がきわめて高い性質を有する。今年度は、主に、これらsdLDL、ANGPTL3と、LPL活性やHL活性との相関性を検討した。対象は、23名の米国人の肥満者で年齢40-71歳、BMI25-35。空腹時と食後、別の日にも同様に計4回採血をうけた。LPL活性、HL活性の測定は、体重あたり50単位のヘパリンを静注後15分後に採血した血漿を用いた。TGはLPL活性と逆相関(r=-0.60,p<0.001)、HL活性とは相関なし(r=0.07,ns)。同様に、remnant-like particle(RLP)-CはLPL活性と逆相関(r=-0.45,p<0.001)、HL活性とは相関なし(r=0.001,ns)。HDL-CはLPL活性と正相関(r=0.44,p<0.001)、HL活性とは逆相関(r=-0.40,p<0.001)した。sdLDLはLPL活性と逆相関(r=-0.36,p<0.001)、HL活性と相関なし(r=-0.12,ns)。一方、ANGPTL3値はLPL活性と相関しなかった(r=-0.04,ns)が、HL活性と逆相関(r=-0.38p<0.001)した。 今回の検討から、人では、マウスの場合と異なり、ANGPTL3はLPL活性でなく、HL活性を阻害する可能性が示唆された。
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